2019年5月27日
ドイツでちょっとおもしろかったこと。エンジニアの一人がとても背が高かった。たぶん2m近くだったと思う。彼と一緒に彼の車に近づいたときのこと、大衆車の小さなフォルクスワーゲンが見えた。彼に、「ちょっと小さいんじゃない?」と聞くと、「いや、一般人の自分にとって、これくらいが良いのだ」と。小さく見えた車だが、大柄なドイツ人が乗るに足りる居住スペースが確保されていた。イタリアで見たランボルギーニとは対照的であった。
その彼が、サウジの現場に来てくれた。毎日、彼と機器の調整をしては煙の出方を眺める日々が続いた。調整がうまくいったと思ったときは、それまでの煙がスッと消えて、「これで終わった」と思ったのも束の間、翌日にはまた煙が出始めるということを繰り返していた。風向きによっては、その煙がフェリーターミナルの方へたなびいて行く。何とも切ない感覚であった。煙に強い関心を持たざるを得なかったせいか、いまだに煙突を見ると煙の有無を確認してしまう。
この問題、どのように解決したかが気になるだろうが、解説は省く。ただ、塩素が気体から結晶体へと変化する場所に凝集の核となるものを入れて、凝集粒子の比重を大きくするという手法をとった。ただ、これは対処療法的なものであり、これを参考に近年では抜本的な処理技術が出来上がっている。
この問題解決の途中でお客の上層部から「有田さん、煙を消す技術を若いエンジニアに教授してくれないか。彼に、サウジの学会で発表させたい」との依頼があった。ちょっと気恥ずかしい感じはあったが、「良いですよ」とレクチャーを行った。
ちょうどこの頃、リベルタス興産の次期社長公募が行われており、たまたま日本に帰ったタイミングでそのことを知った私は、「できればやってみたい!」と応募した。結果として、私に白羽の矢が当たり、第2代社長として就任することになった。ただ、サウジでの問題解決の途上にあったので、就任までに1年間の猶予をいただいた。
24年程度の期間を過ごし、人があまり寄り付かないような色々な国々を回ってこられたことは、仕事ではあるが私にとって貴重な体験となった。その中で一番感じたことは「人はみな違う。違って当たり前」「理解することより、認め合うことが大事」ということ。これは、リベルタス興産での舵取りに役立った。
有田 信二郎